ルル-シュ誕生日おめでとーッ、ていうノリで書いた話(笑)
避けられている
そう感じたのは、つい昨日のことだった
特区日本の詳細資料のまとめをライに頼んだはずだったのに、報告書を持ってきたのは彼の同僚のカレン
ライはどうしたと聞くと、渡すよう頼まれたという
またか
胸に溜まった失意の念が、渦巻いて俺を苛む
最近、ライと顔を会わせられなくなった
お互い多忙を極める昨今
会える機会には必ず顔を出していた
もちろん報告書の提出も顔を見られる機会のひとつ
ライもそれを分かっていて、報告書は必ず自分で提出しに来ていたというのに
ここ最近、とはいっても一週間ぐらいなのだが、ライは俺の書斎に顔を出さない
そればかりか、顔さえまともに見ていない
同じ屋根の下に住んでいるのにも関わらず
基本的に生活する時間は変わらない
だが、ライが書斎に顔を出さなくなったのと同時に、ライは殆ど家に帰らなくなった
否、帰っている気配はある
だが決まって俺よりも遅く、俺より早く家を出てしまう
テーブルの上には作りたての朝食だけが残されていた
避けられて、いるのだろうか
俺は、ライに
そんなまさか、と否定したい
だが現に、ライは俺と会おうとしない
会いに来てくれない
それが、悲しい
俺に落ち度があったのだろうか
それとも、もっと別の……
ぐるぐると考えだけが頭の中を支配する
残るのは、寂しいという思い
「……ライ」
お前に会いたいよ
陰鬱な気分でその後二・三日を過ごし、とうとう俺は家に帰らなくなった
誰も待たない家に帰るほど、虚しいことはない
そう決め込んでゼロの書斎で仕事に詰めていると、ドアが控えめにノックされた
ノック音に気付いて反射的に仮面を手に取ったが、その必要はなくなった
返事を待たずに入ってきたのは、俺の悩みの元凶だったからだ
手には書類
頼んだ覚えはなかった
いつもの黒の騎士団の制服に身を包んだ恋人を、ただ見つめる
実に一週間ぶりの逢瀬だった
くすんだ銀髪も、白い肌も変わらない……一週間前のライと同じ
嬉しかった
会いに来てくれたことが
気がつくと、俺は椅子から立ちあがってライへと足早に向かっていた
「……ライッ」
自分より少し背の低い恋人を抱きしめる
いつもの俺なら、恥ずかしくてこんな真似できない
でも今は、会えなくて寂しかった今はそんなことは些細な事で。
俺は逃がさないようにきつくライの身体を抱きしめた
「ル、ルル-シュッ?」
行動に戸惑ったのだろう
ライの慌てたような声音が新鮮で、俺は笑みを浮かべた
「……なんだ」
「どうしたんだ、急に……君から、抱き着いてくるなんて」
「別に、いいだろう……こういうことがあっても」
「まぁ、僕は嬉しいから良いけどね」
「……それだけか?」
「……え?」
「言うことはそれだけかと聞いている」
ライの顔を見ると、きょとんとした表情で俺を見ていた
それが、頭にきた
「この一週間ろくに顔を見せず、挙句の果てに家にも満足に帰らなかった言い訳は何かないのか?」
それで気付いたのか、ライは目を泳がせた
「いや、その……それには深いわけが」
「ほう……なんだ、言ってみろ」
ライをにらみつければ、予想外に意地悪な笑みをライは浮かべた
「もしかしてルルーシュ……寂しかった?」
「ばッ……な、ち、ちがうッ、さ、さびしくなんか」
「ほんとうに?」
「……ッ」
赤くなった顔を隠すために、ふいと顔を背ける
だが、すぐにライの手がそれを阻止した
「……僕は、寂しかったよ。君に会えなくて」
「……なら、どうして」
「あー……うん、もう良いかな」
「……?」
ライは俺の質問に答えず、ごそごそとポケットを探りだした
引っ張りだされたのは小さな箱
世に言うジュエルケースだった
「Happy Birthday Lelouch」
「え……?」
投げられた祝いの言葉
思考が、完全にとまった
「12月5日はルルーシュの誕生日だろ?」
「あ、あぁ……でも、今日は4日……」
「もう5日だよ」
ほら、と時計を示され、あ、と口が開いた
確かに、もう日付が変わっていた
「ルル-シュに一番に『おめでとう』って言いたくて、残ってたんだ」
子供みたいだな、と頭をかくライ
愛しく思えるその笑顔にほだされる
いやいやまだ許したわけじゃっ
「ま、まだ……理由を聞いてない」
「これ見てくれたら……分かると思う」
頬を赤らめるライに押され、渋々ケースを手に取る
あっさりと開いたケースの蓋
その中には、簡素なシルバーリングが収まっていた
「……っ……これ……」
頬を赤らめながらも、柔和な笑みを向けるライ
もう一度、ケースの中に目を落とす
「驚いた?」
無言で頷く
「これが、理由か?」
「まぁ……そうかな」
「どうして、その、こ、これが俺と会わなかった理由になるんだ?」
照れ隠しにそう言えば、ライはまた頭をかいた
「……恥かしかったんだ」
「……は?」
「買ったところまでは良かったんだ……でも、君に会ったら顔に出ちゃいそうで」
つまり、買ったことがばれそうだったからだと
「そんなつまらない理由で俺は悩んでいたのか……」
「……え?」
「あ、いや……なんでもない」
声が聞こえていたのか首を傾げるライに慌てて取り繕うが、ライはふうんと目を細めた
「何を悩んでたの?」
「いや、だから……」
「僕が君の事を嫌いになったのかと思った?」
「……ッ」
「図星か」
開き直ることも出来なくてだんまりを決め込むと、ライの腕が俺の腰を捕らえた
「……君はバカだね」
「なっ、」
「僕が君を嫌いになるわけないだろう」
「お、おれはそこまで自惚れられないんだッ」
「自惚れて良いよ……僕は君を愛してるから」
「……、」
「これは、その証」
ライの細い手が、俺の左手の薬指に指輪を嵌める
「僕は弱いから、こうやって形にしておかないと気がすまないみたいなんだ」
受け取ってくれるかな
小首をかしげるライの頭を軽く小突く
嵌めておいて何を言うのか
……まぁ返す気は全く無いが
「……もらう」
「よかった」
安心したように笑みを浮かべる恋人
指に嵌まったシルバーリング
……悩みはしたものの、それも勘違いだと分かった
これ以上幸せなことがあるだろうか
いや、たぶんないだろう
今日は、最高の誕生日だ
「ねぇルルーシュ」
「な、なんだ?」
「……あのさ」
「ん?」
「今日、一緒に寝てもいいかな?」
「え、」
「充電、させて?」
「……ヘンなことするなよ」
「あー……たぶん、大丈夫だと思う。自信ないけど」
「はっ!?」
「君が可愛いのがいけないんだよ」
<アトガキ>
誕生日ネタ。
特区日本の終わり方大好きです
ほんとこの二人はただひたすらいちゃついてればオーケーだ(笑)
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